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ブラックとゴールドの静けさで過ごす熱帯の午後|ザ・セント レジス ランカウイ「The St. Regis Bar」アフタヌーンティー

滞在先を島の反対側に置いたまま、午後だけを別のホテルに預ける——その判断は正しかった。ビーチで一杯やってから重い真鍮扉を押し開けると、空気の温度と密度が入口の一歩で切り替わった。

訪問日:2025年2月28日(息子=生後10ヶ月)
利用シーン:家族でのアフタヌーンティー(妻・息子同伴)
予約方法:前日にレストランへ直接予約(難易度:低)
予算帯:アフタヌーンティーセット2名 MYR180(2025年2月現在)。ビール・追加ドリンクを含め総額 MYR250〜300程度
利用内容:ビーチフロントでビール1杯 → The St. Regis Bar でアフタヌーンティー(The Drawing Room のセット)
移動:Grab利用
Bonvoyステータス:プラチナエリート(※本件は宿泊を伴わない外来利用のため、会員特典の適用対象外)

ザ・セント レジス ランカウイのTHE ST. REGIS BAR看板
ヤシの木と青いプールが広がるザ・セント レジス ランカウイのリゾート全景
静かな波が打ち寄せるザ・セント レジス ランカウイのプライベートビーチ景観

島を横切って、別のブランドの午後へ

この日の宿泊は同じランカウイ島のザ・リッツ・カールトンだった。そこから車で島を移動し、午後の数時間だけをセント レジスに充てる。Grabで問題なく到着できたが、実務的な注意を一点だけ書いておく。帰りの車は先に手配の目処を立てておいた方がいい。リゾートエリアは配車の待ち時間が読みにくく、乳幼児連れの場合、待ち時間そのものが体力を削る。ホテル側に依頼する選択肢も含め、着いた時点で帰路を決めておくと午後の設計が安定する。

予約は前日に入れた。混雑で入れないという状況ではなかったが、アフタヌーンティーは提供時間が限られるため、押さえておく方が確実である。

先に、ビーチで一杯

予約時間より早く着いたので、まずビーチ側へ降りた。プールから砂浜、その先の海までが段差なく連続し、対岸には島影を重ねた山並みが横たわる。ブルーのパラソルが等間隔に並び、椰子の影が砂の上を伸びていく。

そこで飲んだビールが、この日の記憶の入口になった。冷えたジョッキの表面に水滴が立ち上がり、海風で汗が引いていく。この一杯があったからこそ、直後の屋内空間との落差が際立った。アフタヌーンティーの前に屋外で体温を一度上げておく——結果的にこれが正解だった。

乳幼児連れの実務としても意味がある。屋内の静かな空間に長く座らせる前に、外で気分を発散させておくと、その後の一時間が明らかに楽になる。

The St. Regis Bar という空間

ロビーは白い漆喰とモールディングで構成された長い軸線を持ち、大理石の床にインレイの意匠が入る。ランタン型のペンダント照明が軸線上に連続し、視線は突き当たりの緑まで抜けていく。熱帯のリゾートでありながら、都市のグランドホテルの文法で作られている。

バーの入口は真鍮フレームのガラス扉。押し開けると、床は一転してダークウッドになり、天井には木のルーバーが走る。石張りの柱、革張りのチューブチェア、カウンター前の黄色いレザースツール。明度が一段落ち、音も吸われる。屋外の白い光量から切り替わる瞬間の落差が、この店の設計意図そのものだと感じた。

中央には珪化木の一枚天板を用いた大きなテーブルが据えられ、そこにウイスキーのボトルが林立している。18年、15年、12年の年数表記が並び、アイラも含まれる。壁面には島の自然と人を織り込んだ大判のアート。隣接してガラス張りのワインセラーを備えた区画もあり、この一角だけで滞在の目的地になり得る密度がある。

セント レジスというブランドがバーを重視する系譜を持つことは知られているが、その思想がリゾートの立地でどう翻訳されるかは物件ごとに異なる。ここは「海に開く」方向ではなく、あえて「閉じて濃度を上げる」方向を選んでいる。ビーチを一巡してから入ると、その選択の理にかなった意図がよく分かる。

高い天井と大理石の床が続くザ・セント レジス ランカウイの上質な館内コリドー
ブラックとゴールドのフレームが洗練されたThe St. Regis Barのエントランス
洋酒ボトルが美しく並べられたThe St. Regis Bar中央の切り株ディスプレイ

三段のスタンドと、TWGの選択肢

アフタヌーンティーセットは2名でMYR180(2025年2月現在)。円形のフレームに三段のミラートレイが吊られた、独特のスタンドで供される。

下段はセイボリー。スモークサーモンのヴォロヴァン(トラウトロウとクリームチーズ)、ソルテッドビーフにイングリッシュマスタードのピクルスと赤キャベツ、ハムとチーズのトルティーヤ・ピンウィール、そしてロブスターのトーストブリオッシュ。ロブスターのカスタードにクレーム・フレーシュとニシンのキャビアを重ねた一品で、この段の主役は明確にこれだった。冷菜として供されるアフタヌーンティーのセイボリーは、往々にして水分が抜けて硬くなる。ここはブリオッシュの焼き面とカスタードの水分バランスが保たれていた。

中段はスコーン。サルタナとバニラの二種で、ストロベリージャム、オレンジマーマレード、マスカルポーネのシャンティが添えられる。マスカルポーネを使う判断が効いていて、クロテッドクリームより軽く、熱帯の午後に重さが残らない。

上段は小菓子が六種。ショコラ、ヘーゼルナッツとバニラ、レモンとマンゴー、柚子と抹茶を重ねた緑の一品、オレンジ、カモミールのムース。艶のかかったドーム型が並ぶ様は視覚的な満足度が高く、味の方向も甘さ一辺倒に寄っていない。柑橘と抹茶で酸と苦味の軸を通している構成は、六種を食べ切る設計として理にかなっている。

紅茶はTWGのラインアップから選べる。緑茶と紅茶の双方に「セント レジス ランカウイ ハウスブレンド」が用意され、ミント系、白茶、プーアル、フレンチアールグレイまで幅がある。カモミールや南アフリカ産のカフェインレス茶が明記されている点は、家族連れにとって実利的な情報である。授乳期の同伴者がいる場合、選択肢の有無が滞在の快適さを左右する。

追加でロングドリンクも一杯。オレンジピールを添えた琥珀色の一杯で、甘味の連続する上段に対して口をリセットする役割を果たしてくれた。

シルバーのフレームに色鮮やかなスイーツとセイボリーが並ぶ3段アフタヌーンティースタンド
オレンジピールが添えられたThe St. Regis Barのアイスティー
The St. Regis Barのアフタヌーンティーコース内容が記されたメニュー表

生後10ヶ月の息子と

アフタヌーンティーは、乳幼児連れにとって難易度の高いコンテンツである。静かな空間で一時間以上座る、しかも直接食べられるものはほとんどない。それでもこの日が成立したのは、いくつかの条件が揃っていたからだ。

第一に、日中の時間帯は席に余裕があった。隣席との距離が十分にあり、多少の声を出しても他の客の午後を侵食しない配置だった。アフタヌーンティーの成否は、料理より先にこの一点で決まる。

第二に、ソファとアームチェアを主体とした席構成で、床は板張り。抱っこひものまま座っても、立って揺らしても動作の自由が確保できた。移動は終始抱っこひもで通したが、この空間では畳んだベビーカーを持ち込むより身軽で正解だった。

第三に、前述のとおり先にビーチで発散させていたこと。屋内に入った時点で息子は満足しており、こちらは落ち着いて三段を進められた。

一方で、月齢10ヶ月が直接口にできるものはスコーンの一部程度に限られる。離乳食は持参が前提と考えておくべきで、この点は宿泊先で用意される乳幼児対応とは前提が異なる。外来のダイニング利用として訪れるなら、食事の時間帯とずらして組む設計が現実的だ。

総評

料理の水準、空間の設計、そしてそのどちらもが「熱帯のリゾート」という前提に引きずられていないこと。ロブスターのブリオッシュとマスカルポーネのスコーン、そして柑橘と抹茶で酸味の軸を通した上段——この三点で、アフタヌーンティーが単なる観光的コンテンツに落ちていないことが伝わってきた。ビーチで一杯やってから濃度の高い屋内に入る、という順路も含めて、午後の使い方として完成度が高い。ランカウイを再訪する機会があれば、次は宿泊そのものをこのホテルに充ててみたい。バーの品揃えを見る限り、夜に評価軸を持つ物件である可能性が高い。

推奨シーンは、島内の別リゾートに滞在しながら午後を移す使い方、そして乳幼児連れで「静かに座れる時間」を確保したい家族。前日までの予約と、帰路の車の手配を先に済ませておくことが実務上の要点である。

今回の島での宿泊はポイントを充てて押さえており、その分の予算をこうした島内の寄り道に振り替えられている。滞在の骨格をBonvoyのポイントやエリート資格で組み立てておくと、現地での選択肢はこうして広がっていく。どのカードをどう持つべきかは家庭や利用頻度によって最適解が異なるため、気になる方は下記フォームから遠慮なく尋ねてほしい。

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